バカにつける薬。

確かにおでんが美味しかったその日、気持ちよくお酒は進んでいた。

焼酎の芋か麦かくらいの違いは分かるが、これが島美人、これが姶良、これが佐藤、なんて言われてもどれも「美味しい」って感想しか言えないレベル。

そんな人間が焼酎を飲み続けると。

まず電車で眠る。そして降りるはずの駅を過ぎても眠る。ひたすら眠る。その電車の終点についても眠ったまま。最後は駅員さんに起こされて目を覚ます。


ここがどこだか確認するのに時間がかかる。

あ、福間ですか。


私が降りるはずの駅からずいぶん遠くに来ている。

思えば遠くへ来たもんだ。

海援隊の歌が聞こえる。


ただ私はひたすら眠ってて遠くへ来ただけ。何も思ってはいないので武田鉄矢の心境にはなれない。

タクシーに乗りビジネスホテルに向かってもらう。

ちなみにその地域に一件だけあるというネカフェに行ってもらったが、【リニューアルのため休業中】との貼り紙。

もう二度と開けるな。


深夜1時にビジネスホテルにチェックイン。

さらに追いビール。

ヤケクソになる。

ホテル代、今日の飲み代より高い。

目を覚まし準備をして、フロントでタクシーを呼んでもらう。

タクシーで駅まで着くと運転手が「お忘れ物のないように」と声をかけてくれる。

「大丈夫です。ありがとうございます。」

と降りて、スマホがないことに気づく。

慌ててその降りたタクシーに戻ったが、座席には見当たらない。

ホテルに忘れてる。

またタクシーに乗る。

ホテルに着くと、タクシーを呼んでもらったフロントの、その目の前のソファーにスマホを発見。


フロントには三人の人間がいたが、その待合の目の前のソファーに忘れられたスマホに、誰も気づいてないことが恐ろしい。

スマホを取りまたタクシーへ。


電車の往復、タクシーの2往復、ホテルの一泊。

これらはアルコールというものがなければ払う必要のなかったお金である。

これこそが【無駄遣い】である。


もう酒はやめた。


そしてその日の夜には、そんな決意表明したことすら忘れ、ただただお酒を飲んでいる自分がいる。